見えない罪と、月
「俺はルシェさんが逃げて欲しいけどね。というか、ルシェさんが来ると言っても俺は拒むよ?」

「それは仕方のない事だね。僕を嫌っても良いよ? 望むなら此処でお別れでも構わない」


びくっと反応をするセリル。正反対にセイルは眉1つ微動だにさせない。

何も言わないセリルを見て、セイルは一言出掛ける事を告げて家を出た。行先はルシェの家。


「よく来たね。雨だって言うのに」

「ああ、実はまだ早いかもしれないけれどこれを渡そうと思ってね」


セイルの手には自作の婚約指輪。それを見たルシェは目を宝石のように輝かせた。

そして少し身体の濡れたセイルを抱きしめた。セイルはそれに驚きながらも、意を決して言葉を発する。


「君にこれを渡す前に、言わなければならない事がある」


セイルから離れて首を傾げるルシェ。ルシェの瞳に映ったセイルは真剣な顔だった。
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