見えない罪と、月
「よく聞いて欲しい。実は…………」

こう話を繰り出そうとしたその時だった。セイルは殺気を捉えた。

それは嫌でも感じ覚えのある物。そう、イレイスの物だったのだ。

殺気だけで何処にいるのかも分からない。何時襲ってくるかも分からない。

彼らの行動パターンを考えれば、今はまだルシェと言う他人がいるから襲ってはこないだろう。

イレイスは人前での殺しは嫌がる性質なのだから。


「セイル?」


突然黙りこんだセイルにルシェは戸惑いを隠せずにいた。

セイルは先程まで言いかけていた言葉をやめ、新たに別の事を小声で言い始めた。


「一生、命の危険に曝される事になっても僕と幸せになりたければ、1時間後に出る支度をして町の出口で待っていて」


ルシェは言葉の意味が理解出来ずに、セイルに理由を求めようとした。

だがセイルは先を急ぐかのようにその場を後にした。
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