見えない罪と、月
そうして死神ヒジリは誕生した。

ヒジリ不死身ではあるが、大事な人間が命を失う時その存在はなくなる。

大切な者が死んでしまったら、守るものはなくなるからだと言う神の判断であった。

そしてあの時も神の依頼は間違いなくルシェを殺す事であった。

だが珍しく彼はルシェを殺す事はせず、彼女を生かす道を選ぶ。

その行為は神にとって怒りを買う行為。神は1つの罰を彼に与えた。

死神の仕事を奪う事はしない。彼に与えられた罰とは……


「実はね……右足があまり動かないんだ」


右足の殆どの自由を奪う罰。

ヒジリになれば勿論自由にはなる。が、頻繁にヒジリになる訳ではない。

日常生活はセイルのまま。人間である時の自由を一部奪ったのだ。
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