見えない罪と、月
「だから、本当に危なくなったら僕を捨てて逃げてね」


苦笑いをしながらセイルは言う。2人は勿論反論する。


「そんな事出来ないよ!」

「そうよ。貴方の右足くらい2人でカバーするよ。セリル君は怪力なんだし」


ルシェは逃げる時はセリルにセイルを押しつける気満々のようだ。

セリルは怒る事もせずにルシェに同意する。自分の怪力があるから大丈夫だと。


「ありがと……でも、僕は2人を騙していたんだよ? ある種の人殺しなんだよ?」


戸惑うセイルに2人は口を揃えて言う。“ちゃんと教えてくれたなら関係ない”と。


「セイルは殺していない。神様の元へ人を送り届けているだけじゃない」

「殺しかもしれないけれど……やめてほしいけれど……兄さんには生きて欲しい」


絶対に叱られると思っていただけに、セイルはきょとんとしてしまった。
< 94 / 97 >

この作品をシェア

pagetop