そして海の思い出を胸に
振り返ると体育館の入口辺りで、こっちを見ている隆志先輩がいた。
「美雪―! 何してんだ? 部活、始まるぞっ!」
えっ? 始まる、って……まだ始まってないのぉ?!
隆志先輩のセリフを聞いて、急に現実の世界に戻った。
隆志先輩が私の後ろの方を怪訝そうに見たような気がする。
ここと体育館への入口は少し離れているから、あまり表情は分からないんだけど。
でも、その視線がなんなのか気付き後ろを見ると、涼さんが体育館とは逆の海の方へ離れて行く姿が見えた。
突然、涼さんが振り向いた。
「また、今度」
そう言うと、また背を向けて、楽しそうに走って行く。