死神彼女

ざああ…。


雨が窓を叩く音…

雨が大地を鳴らす音…


全てが鬱陶しくて俺は溜め息をついていた。


この日、しがない田舎町には珍しく強雨というモノが訪れ、街行く人々を困らせていた。


豪雨と強風にも関わらず必死に前へと進もうとする人、人…。


どうして、あんな苦労をしてまでみんな前に進みたがるのだろう。


家で閉じこもっていればいいのに。


そっちの方が…何倍も何倍も楽なのにな。



なんて思いながら、しばらく窓から街を見下ろしているとひとりの変な女が俺が住んでいるアパートにズンズン歩いてくるのが見えた。


傘もささずにズンズン、ズンズン歩いている。


強風で水を含んだ長い茶色の髪の毛を重たげに揺らしながら歩く姿はどこか凛としていた。


変な女…。


街行く人々を見るのも飽きてきたのでカーテンを閉めると机に伏せていた読みかけの本を手に取り読み始めた。


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