死神彼女
俺は深い溜め息を1つついて玄関を指差した。
「お帰りはあちらです」
やっぱりこの女はおかしい。
早く帰さなくては…。
「……あたしは帰れませんっ」
「はぁ?」
「あたしには使命がありますっ!…あなたがあたしを信じてくれないなら…」
少し間が開いて女は口を開いた。
「証拠を見せますっ」
と言うやいや女は突然走り出した。
窓に向かって。
「ちょっ!!」
ガラっ!!
女が窓を開けた瞬間、俺も走り出していた。
突然の出来事に頭が回らないが……俺の頭の中にはあの出来事が蘇っていた。
「やめろ!!!!!」
無我夢中で手を伸ばせば女の服の端を掴んでいた。
「もう…誰かが…目の前で死ぬところのなんか見たくないんだ!」
ーでも、もう遅かった。
俺が女の服を掴んだ頃には女の体はもう宙に投げられていたからだ。
「あ…」
ギュッと目を瞑った。
最後の太陽の笑顔が頭に浮かんだ気がした。