死神彼女

「…はい」


謎の女にタオルを投げる。

「あ!ありがとうございますっ」


女はキャッチしたタオルを胸に抱え嬉しそうに笑った。


「それで体拭いたらすぐ帰れ。傘貸すから。いや、あげるから」


結局、あの後…

部屋のモニターから、女の様子を見ていたのだが…。


「はくしゅん!」


寒いのだろう。

くしゃみをし、濡れきった体を縮こめている。


…………あんな変な女、ほおっておいたらいい。
いきなり、あたしは死神です。なんて名乗る女が普通である訳ない。


そう思った。


そう思って、読みかけの本を読もうとした。


けど…なんだか、変な罪悪感が俺を襲った。


チビでまるで捨て犬のようだった女…。


ずぶ濡れでくしゃみまでしていた女…、、、。


はぁ…。


俺は溜め息をつきながら再び玄関に向かってしまったのだった。


…タオルと傘を渡したら、すぐ帰そう、そう思いながら。



「あの…タオル、ありがとうございました」

丁寧にたたんで女はタオルを差し出した。

「……」

それを無言で受け取る。
どうでもいいから早く帰ってくれ。

女は子犬のような視線で俺を見上げた。

「あのぉ…非常に言いにくいのですが…さっきのお話しは本当なんです」
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