切なさに似て…
「くっつくのも時間の問題だな」

一度閉じた口をまた開け、話しを続ける。

「…ばれるのも時間の問題だけどな。まーた、上の連中は目くじら立てるんだろうな」

「そうですね」

そう答える私も。

「こればかりは仕方ないね」

そう話す天野さんも、あの2人に忠告する気はない。

ここに長くいる人間はみんな、面倒なことに巻き込まれるのはわかっていた。

わざわざ自分から関わりたくないから、思うことはあっても見てみないフリ。気づかないフリをする。


社内恋愛は自由だ。って、思っていながら、誰も何も言わないのはみんなわかっているから。

どうなるか、わかっているからだった。


私はそれを重々承知していたから、“このまま2人がくっついて、出来上がってしまえばいいのに…”そう思えるのか。

だから、結城さんとの付き合いに距離を置いているのか。


…きっと、どちらでもない。

単にそう思えば楽だからだ。


大人になっても、私はいつも楽な方法を選んでいる。
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