切なさに似て…
18時になり仕事が終わったというのに、帰る素振りを見せることなく、20時まで勤務の結城さんに、ピッタリと擦り寄る白崎さん。


その様子を見ても何とも感じないのは…。

見慣れた黒い車が停まっていたからなんだろうか。


黒光りした車はハザードランプをチカチカと点滅させ、反射加工が施された電柱がそれに反射している。


路肩に寄せられた車に駆け寄った私に気づいたのか、窓が開けられた。


「お疲れー」

そう軽快に挙げられた信浩の手に、私は唖然とする。


お疲れーじゃないから。何してんの?

そう聞きたいのに。

「お疲れ…」

私も信浩と同じように、軽く手を挙げていた。


聞かなくたって、信浩の意図が十分理解できるから。

何処で見繕って来たのか段ボールの束が、後部席にこれみよがしに詰まれている。

「乗れよ」

と、静かに放たれた台詞に私は従うことにして、車内へと乗り込んだ。


車をゆっくりと走らせた信浩が向かおうとしているのは、自分のマンションではなく。あの、ボロアパート。

「着いてっか?」

アパートの前に車を停止させた信浩の申し出を断り、私は段ボールの束を抱えた。
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