切なさに似て…
私たちが16歳になった夏。

背伸びしてみてもまだまだ大人には届かない。

だけど、高校生になって15歳から16歳のラインを越え、まだ誕生日を迎えていないクラスメイトのみんなより、ちょっぴり大人になったような気がした。


『早く大人になりたいよなー』

ボソッと独り言のように呟いた信浩に私は興奮気味に声を張り上げた。

『わかるっ!』

『…ぶっ。興奮し過ぎ』

目を見開き、顔をくしゃくしゃにして笑った。


『20いや…、18でもいいから早くなりたいなぁ。何か大人って感じじゃない?』

『そうそう、なんつーの?憧れつーか、高校生って大人だなって思ってたけど。いざなってみれば中学ん時とそんな変わんねーよな』

『そうなんだよねー』


私は意味もなく早く成人になりたかった。

信浩も同じこと思ってたんだって、それだけのことなのに私の心は弾むばかり。


そんな私の心中なんて、信浩は気づくことはなかったんだと思う。

『俺はいつ結婚すんのかなー。一生しなかったりしてな?』

『あははっ。信浩が結婚とか有り得ないっ。想像つかないんだけど』

チロッと私の方を向いてそんなこと言うから、思わずおかしそうに笑ってしまった。


本当のところは、信浩の口から出た“結婚”ってキーワードに私の胸の奥でチクリと何かが刺さった。
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