切なさに似て…
目をパチクリしていた私を見て、信浩は口を動かした。

『だーかーらっ。どうせ結婚する気ないもん同士なんだから、それもアリじゃねーかって。柚果なら気遣うこともねーし』

『ちょっと、その気遣うことないしって、引っ掛かるんだけどっ』

『あ、やっぱそこ?あっはは。ほんとのことじゃんっ!それとも柚果は俺に気遣ってんの?』


…気を遣う?信浩に?私が?

うーん。いや、それはない。


私はブンブンと首を横に振った。


『だろ?んじゃー、決まりっ』

そう笑って言って、指を鳴らした。

よく考えると25歳って遅いのか早いのかはわからないけれど、何だか早いような気がした。


大人になったら。ようやく手に入れた自由を思う存分満喫したい。と、いう理想を思い描いていたから。

ほんのり甘いはずのショコラケーキが、異様に苦く感じた。


これだけ、毎日一緒にいれば、確かに気なんて遣うわけがないだろうし。

自然体だろうけれど。


『だけど、25って早くない?』

『そうかぁ?んじゃ、30。あっ、ダメだ。やっぱ25』

顎に手を当てブツブツ言いながら何かを考えている様子の信浩は、顔をバッと上げ頷いた。
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