切なさに似て…
『何で?』

『お前すぐ忘れるじゃん』

『忘れないよっ。ってか、すぐってどういう意味っ!?』

『すぐ物忘れるし、この前も体操着忘れただろ?あとは…、ほら今日だって財布、ここに忘れて来てたし…』

上を見上げ、指を1本ずつ折り曲げていく。


『あーっ!もうっ、わかった!!もういいよっ…』

『よくわかっただろ?』

得意になる信浩に、確か、私は膨れっ面をした。


信浩の誕生日から1週間が経過し、小さなショコラケーキ1個を2人で半分に分け食べた日。

同じ模様の包装紙に包まれた、[Y]と[N]を象ったイニシャルのキーホルダーを、鞄に付けた日。

25歳になったらと、安易に“約束”を交わした日。


皮肉にもその日は、私の16歳の誕生日だった。

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