切なさに似て…

会社の更衣室に入ると、今日も早く着いて着替えを済ませていた白崎さんが、念入りに身なりのチェックをしていた。

毎度見慣れた光景に、心のどこかがホッとしたのもほんの数秒。


「あっ！立花さーん、おはよーございまーすっ！！あたし、彼氏と別れたんですよー！」

朝の挨拶をする間を持たせてくれない彼女から出た台詞に、私は心の中で「早っ…」と、呟いていた。


瞬きを繰り返す私の前に駆け寄り、更に話しを続ける。

「それでーっ、聞いて下さいよー！なんと、今日。結城さんとデートなんですよー」

丁寧に巻かれた髪が揺れ動くくらいに、興奮したように私の腕も一緒に揺さぶられる。


嬉しそうに顔を綻ばす白崎さんに捕まれた腕を、さっと引き離しロッカーの扉を開けた。


「へぇー、良かったね。だから彼氏と別れたの？」

「そうなんですよー。結城さんのことが気になり出したら、彼氏なんてつまらなくなっちゃって」

彼女はさも、つまらなさそうにくるくるにカールされた毛先を指で弄る。