切なさに似て…
髪を乾かし、内窓を閉めようと手をかけた時。

「明日も仕事終わんの遅いのかよ?」

と、私の方を見ることなく、布団を敷いている信浩の姿が反射してガラスに映る。


「明日も遅いね。1人辞めちゃったから」

「ふーん」

自分から聞いておいて、信浩はあまり興味なさそうに答える。


明日も迎えに来てくれるんだろうかと、微かに当てにして心の中で待ち受けてみたのに。

ふーん、って…。

だからといって、それがどうかした?とは、もはや聞き返すことが出来ない。


「今日はビール、飲まないの?」

「あぁ…」

話を変えてみたけれど、素っ気ない態度で返され会話が続かない。


何でもなかったかのように、窓を閉め振り向くと信浩は布団を敷き終え、その上で胡座をかいていた。

更に話しを変えようと、口を開いたところで。

バッドタイミングで携帯の着信音がどこからか聞こえてきた。

バッドタイミングなのかナイスタイミングなのかは別として。


それが携帯電話の着信音だとすぐに理解できたのは、私の鞄の奥底から携帯の持ち主を呼び出していたから。
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