切なさに似て…
その信浩のくぐもった声に。


「…え?」

目を開けることができない私の、声とは言えないような声が出る。


「…何で、俺じゃないんだよ。何で、他の男なんだよ。
いつになったら俺のこと見てくれるんだよ…。いつまで友達なんだよ?
なぁ…?いつになったら…、俺のこと好きになってくれるんだよ…?」

次はそうはっきりと届いた声に、考える余裕を与えてはくれず。

私はすぐに反応することができなかった。


肩の重みが消え、僅かばかり窮屈な体が離れた瞬間、唇に当たる熱く柔らかな感触。

途端に息苦しさを覚える。


タバコの苦味が唇に伝わる。


…え?


自分の中で浮上した疑問に。

閉じていた瞼を開けると、飛び込んできたのは信浩の長い睫。

信浩の色素の薄い前髪が私のおでこを掠める。


背中に回されていた信浩の手は、私の後頭部を押さえつけていた。


えっと…。


これは、キス。だよね…。
< 198 / 388 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop