切なさに似て…
今晩は帰ってくるわけがないって、頭では言い聞かせているのに、耳と心は聞き入れてくれない。

幾度もこの薄っぺらい布団で寝ていたのに、こんなに寒い夜は初めてじゃないかと思えるほど。

掛け布団の隙間から入り込む、外気の空気が冷たい気がする。


じゃあ、ベッドで寝ればいいのに。何もわざわざひらべったい布団で寝ることないのに。

ベッドじゃ暖かくて、スプリングが調度よくて。

仮に帰って来たとしたら、熟睡してて気付かないかも知れないから。


仮定を立てただけで、帰ってこないのはとっくにわかってるのに。

何してるんだろう。


『こんなに近くにいるのに。何で…、俺じゃないんだよ…っ』

どうして。

それを信浩が言うの…?


どうして。

先に彼女を作った信浩が言うの…?


どうして。

そんなこと言うの…?



眠れるはずもないのに、目を暝り寝ようと試みるのは馬鹿げた行為だ。


信浩の声しか聞こえないよ…。
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