切なさに似て…
広くはない空間に残されていたのは。

家電とひらべったい布団にベッド、そして愛用の座椅子にテーブル。壁と壁に突っ張られている色褪せた突っ張り棒。数少ない食器や調理器具。

明日生きるための、必要最低限の荷物だけ運ばれてしまっていて、それはまるで夜逃げでも実行した主。

物が消え失せただけで、古い造りや狭い部屋、壁紙のタバコ染み。

何も変わってはいない。


この部屋の主が出て行ったって事実だけが、私の瞳の中に映し出す。


その消失した荷物と引き換えに、テーブルの上に乗っかっている何の変哲もないレポート用紙が一枚。


信浩が書いたであろう置き手紙。

初めてもらう手紙の内容はたったの5行で、その短い文面からは信浩らしさが伺える。


だからって…。

それを言われて、私はどうすればいいわけ?


炎を点火し暖かさを演出し始めたストーブに背を見せ、うずくまるように体を丸めて。

空っぽになった頭の中。焦点が合わない目には何も映らない。


延々と、ひたすら時間が流れていくだけ。
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