切なさに似て…
灰皿に押し付けられた皺のついた長めの吸い殻。

歪んだタバコを伸ばし、口にくわえ揺れ動くジッポの炎に近付ける。


焦げた先端が焼けて煙りが上がった。唇に挟んだフィルターを思い切り肺へと吸い込んだ。

「…っ、ゴホッ。ゴホッ…」

咽ぶと同時に口から煙が吐き出される。


思わず、火のついたタバコを灰皿に押し付け揉み消した。

吸い込んだ煙はきつくて、気持ち悪くて嫌悪感しかない。

自分が吐いた煙が目に染みて、痛くて滴が浮かぶ。


何が旨いのかわからない。

煙くて、苦くて、苦しいだけ。


…カチンッ。

この音は好き。


信浩が吸うタバコは好き。

でも、自分で吸うのは嫌い。


信浩がつける香水は好き。

でも、昨日貰った香水は…。


嫌い。


…これが、最後のプレゼントだとしたら。

貰いたくなかった。


いらなかった。

欲しくなかった。


いなくなるなら、何もいらない。

欲しかったのは、こんなものじゃない。
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