切なさに似て…
「じゃあ、元気でね。バイバイ」

「はい、立花さんも」

そう別れを残し、背を見せた彼女のヒールが細粒の砕石がアスファルトを擦り合わす、ジャリジャリと立てた音が遠ざかる。


何処かでバッタリ遭遇しない限り、2度と会うことはないだろうと思われる白崎さんの後ろ姿を見送り、私も彼女の影に背を向けた。


『聞いて貰って、あたしもスッキリしました』

別れ際に白崎さんが言った言葉が、耳に流れ込んで来て、ソロリと振り返る。

彼女の姿はすでに無く、代わりに雲の隙間から顔を覗かせる上弦の月。狭い三日月の月明かりが暗闇の空を白く染めていた。

踏み出した足を時たま緩め、振り向き空を見上げれば、沈み消えた太陽の光に反射し輝きを放つその月が、いつまでも私の背中を追いかけて来る。


『意外!!立花さんにもそんな一面があったんですねー。もっと冷たい人なのかと思ったー。そんなに想われている彼は幸せですよねー』

話し終えた私に発せられた台詞に、そうだろうな。と、深く頷いた。
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