切なさに似て…
口を開け放したレナの横に目線を移すと、同じく口をだらし無く開け、眉を寄せた男が呆然とした様子で私達を見回している。

レナにくっついていたサラリーマン風の男は、もっと若いかと思いきや、近くで見れば大して若くもなく、40代くらいに見受けられた。


…いい年したオヤジじゃん。

不必要にがっかりした私は、頭の中に自分の姿を描き出し、張っていた肩を落とさせる。


「なっ、何だ、君たちはっ…」

威勢のよい態度で放たれた台詞は、少しばかり震えているように聞こえる。


「オッサン、それはこっちが聞きたいんだよ。この子、どうする気?オッサン、あんた独身?それとも妻子いんの?」

正義感丸出しの治は漫画か何かの主人公に成り切っているのか、迫真の演技力でオヤジに詰め寄る。


端から見ていれば、それがなかなか面白くて、私は一観客に成り切ろうと決めた。


「君たちには関係ないだろう。さ、行こうね」

と、オヤジは優しい口調でレナの手を取り、歩き出そうとする。


それは、自分に置き換えて見てみると、何とも気持ちが悪く吐き気がする。


「待てよ、オッサン!」

そこでお決まりの台詞が飛んで来た。
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