切なさに似て…
「クソガキが。ふざけた口聞きやがって」

演技に拍車をかけ、調子に乗って来た治は、片手でポケットから探り当てたタバコをくわえ火をつけた。


「ふざけてるのはあなたじゃない!?わたしはもうお金貰ってるんだからっ!離してよっ…!」

「だからクソガキなんだよっ。たかだが、福沢諭吉数人で自分の体汚す気かよ」


先程から“クソガキ”を連呼する治に、心の中でもっとやれっ!もっと言え!と、エールを送る私も可笑しいのだろうけど。

私の隣で「治、カッコイイー」なんて、優雅に吹けもしない口笛を吹こうと空回りしている麻矢も、実に可笑しかった。


いつしか弱まりを見せたちらつく雪に、包まれた私たちはそれはひどくおかしな集団であろう。

寒空の真下で、立見して傍観者に徹する私と麻矢に。正義感たっぷりの治に。嫌がる女の子と、中肉中背といったオヤジ。


「…こうでもしなきゃ、学校に通えなくなるのよっ!帰る場所もないしっ…。ほっといてよっ!」

唐突なレナの悲鳴に近い叫び声に、私の耳がピクピクッと疼いた。
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