切なさに似て…
「それなら、尚更ほっとけないな。いくら貰ったんだよ?」

「だから君たちには関係ないだろ。困っているようだったから声をかけただけであって、寧ろ僕は人助けしているのだから」

開き直ったオヤジは、治の前に立ちはだかる。


「人助け?ふざけんなっ。犯罪に人助けも何もないんだよ!」

そう一喝したのは治ではなく、高みの見物をしていたはずの麻矢だった。


「面倒くさいし、そこに交番あるから行こうか」

治はくいっと上げた顎でその方向を示し、オヤジを挑発する。


だが、そっちの対処の方がこの上なく面倒くさいと思うのは私だけなんだろうか。


治の交番という一言に、オヤジは目許を引き攣らせ、今までの平然を保っていた態度が一変した。


「な、な、何なんだっ!俺はこの女が困っているっていうから助けようと慰めようとしただけなのに、何なんだ!こんな誰にでも股を開くようなガキに、俺の人生めちゃくちゃにされてたまるか!」

握り締めていたレナの手を乱暴に離し、みるみる表情を強張らせ唾を飛ばしながらそう怒鳴り声を発した。


「そう思うならもう2度とするなよ、オッサン」

どうしようもないな。と、投げやりな溜め息を吐き出し、治は短くなったタバコの火を消した。こんな場面でも、吸い殻をポイ捨てすることはなかった。
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