切なさに似て…
ピピピピピピッ、ピピピピピピッ…。うるさい…。

「…ずかっ!…柚果って!起きろっ、遅刻すんぞーっ」

耳障りな携帯のアラーム音と、信浩の大きな声を耳元で受けるも、私の瞼は開いてくれない。

「…ん~っ…。あと5分…」

「で、…起きないだろうがっ!!」

そう言われた後、私の体が軽くなる。体と言うより、布団を引っぺがされその重みが無くなった。


「ちょ…、寒いって。エッチ」

「誰がエッチだこのっ!!ヨレヨレのスウェット姿でよく言うわっ」

「エロいしょ…。なかなかイケてるしょ?」

「はぁ?どこがだ…?発情すらしねーよ。ほら、早く起きねーと化粧する時間ねーぞ」

「そんなこと言われても…、目が開かないんだよ」

まだ暗闇に覆われた視界に、なす術がない。


「ったく、しゃーねぇなっ!!」

明らかに面倒臭そうに溜め息をつき、腕を掴み取り私を引っ張り起こした。

引っ張られたまま連れて来られたのはバスルーム。


「冷たい水で顔を洗えば、嫌でも目が覚める。」

そう言った信浩の声は浴室にエコーする。

洗面台であろう場所に立たされた私は、渋々冷たい水に手を通す。
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