切なさに似て…
「…何よ、アンタか」

私の姿にあの人は、一瞬がっかりした表情を見せた。

それに答えることなく、続き部屋へと体を返す。


「レナならいないわよー。もう2日帰って来てないのよね」

金使ったんじゃないのあの子。と、不気味な笑い声を上げた。


「ったく、ここのガキはロクに奴いないなっ」

金持って来ないのかよっ。吐き捨てるかのように、あの女の横にいた男が口を挟む。


口を開けば金、金、金。聞き飽きた私は、そんな2人に構うことなく、レナの私物をかき集める。

私と同じで物が少ないレナの私物は、雑貨も衣服も私より随分と少ない量だった。

大きめの旅行鞄一つ、スクールバッグにサブバッグに一つずつですっぽり収まる量。


段ボール4つで、『女のくせに少な過ぎるから。どんだけだよ』と、信浩に馬鹿にされた私よりずっと少ないレナは、ほんとどんだけだよと言いたくなるほどだった。


「ちょっと、何してんのよアンタ」

開け放した襖の向こうから、声を振り上げるあの人は、私の行動を目で追いかけていた。
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