切なさに似て…
『自分で作る家族って、意外に悪かないぜ』


早く大人になりたいと、心の底から懇願した。

きっと、私自身が大人に成り切れていなかったから、強がって意気がって、“大人”を演じてただけなんだ。

言われなきゃ気づかないって、つまらない意地張って。子供と同じだ。

あの頃も今も、私はこれっぽっちも成長しちゃいない。


家族とか絆とか信頼とか、そんなものないに等しい中で、唯一救われていたのは、レナがいたから。

スーパーに行くのも、いつでも闇に包まれた辛気臭い部屋で。

もし、レナがいなかったら。私一人だったら。どうなっていたか未知の世界。


我慢できたのは、耐えられたのは。レナと2人だったからなんだ。


そんな、忍耐も今日で終わり。

このドアを開ければ、全てが終わる。


ノブを回すと、行き場をなくしたタバコの煙が押し寄せ、すんなりと開いた扉から列を乱して逃げ出して行く。


数足の靴が乱雑に脱ぎ捨てられた玄関へと、一歩、また一歩と足を踏み入れる。
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