切なさに似て…
結城さんと入れ違いで、天野さんが事務所へ来て首を傾げる。

「あっれー、結城見なかった?」

「今行きましたよ」

外を指で示し窓の向こうに目をやると、お客さんと会話していた結城さんの姿が確認できる。


「ほんとだ。ありがと」

そう言って慌てて踵を返した天野さんは、足を止め振り向いた。


「すっきりした顔して、暗い顔してた昨日までとは別人みたいだね。何かいいことあった?」

「色々と…、まぁ…」

「彼氏と喧嘩でもしてた?今度その彼氏紹介してよ」

言葉を濁した私に、高らかな笑い声を上げドアへ向かう。


「だーからっ、違いますってば!」

ムキになって声を荒げるも、わらいながら片方の手で耳を塞ぐと、外へと出て行ってしまった。


彼氏…、じゃないのに。

吐き出した溜め息は、どこまでも重たいまま。


昼休み、飛行機の予約状況を検索すると、さすがゴールデンウイーク。

すでに空席はなく考えた末、来週の土日に往復のチケットを予約することにした。

決定ボタンを押そうとする指が僅かに震え、来週だというのに無性に胸の奥がざわついた。
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