切なさに似て…
事務所の扉が開き、結城さんがキーボックスへと歩み寄る。そして、鍵を手にし声を張り上げた。

「伝票いい?南建設さんで…、A2033と…、M1498ね」

「はい」

鉄製のナンバープレートがついた鍵の、番号を読み上げる結城くんに従い、カタカタとキーボードを打ち付ける。


「整理整頓に変えたんだ?」

そう声のする方へと視線を移すと、彼は顎に手を当て上部を見上げていた。


「さっき。澤田さんが剥がしました」

と、私は答えてまた目線を下に落とし、言葉を続ける。


「白崎さんに、ありがとうって伝えてください」

「わかったよ。…俺と付き合ってた時より表情が柔らかくなったね?もう、他の男に寄り道するなよ?」

その台詞に顔をあげると、伏せた瞼が開き、目許を緩ませた結城くんは、扉の奥へと引き返した。


知っていて、付き合ってくれていた。

知っていて、それでも知らないフリをしていてくれた。

罪悪感がないなんて嘘。

結果、利用するだけしてきたけれど、本当は罪悪感だらけで気づいたら取り返しがつかない状態。

…ごめんなさい。


見えなくなった背中に謝ったって、無意味なのに謝りたかった。

一つ一つ、整理整頓できたら、堂々と前を向いて歩けそうな気がした。
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