切なさに似て…
お昼に抜け出し、別口座のキャッシュカードの暗証番号を変更した。番号は15歳のレナってことで1507でいっかなんて、安直だった。

仕事を終え、クリーニング店へ制服を預けた帰りに、スペアキーを作り、立ち寄ったスーパーで食料と一緒に購入したのは。当時、51円だったお菓子を、敢えて1つ買った。

あれから12年が経った今、原料高騰と消費税が引き上げられ51円が63円。


いつまでも、過去にこだわって、縛られてはいけない。

そう教えてくれているかのように感じた。


そのストロベリー味のウエハースは、賑やかなテレビの音声が響き渡る狭い部屋で、レナと半分こした。

「これ、部屋の合い鍵。それと…、来週の土日、九州…、っても福岡ね。ちょっと行って来るから」

「へぇー」

スペアキーをレナに渡し、そう伝えると、レナはニヤニヤと口許を緩ませ「お土産よろしくね」と、私の携帯電話を奪うと検索してお土産リストを書き出し始める。


「確か…。信浩、さんだったっけ?わたしお姉ちゃんより、お兄ちゃん欲しかったんだ~。頑張ってね」

生意気にニヤついた顔を上げ、スプリングをギシギシと鳴らし、ベッドの上で数回飛び跳ねた。


テーブルの上にペンと一緒に置かれたルーズリーフの切れ端には、ラーメン、通りもん、スティックまんじゅうと、どうリサーチしたのか、博多の特産物らしきものが書き並べられていてた。
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