切なさに似て…
浴室から出て、タオルを体に巻きつけ、普段と代わり映えのない部屋着に袖を通す。

見たところ洗面台付近にはドライヤーが見当たらない。水分が含んだ髪の束を取り、タオルで押しあてる。


鏡に映る私は、ちょっと切なそうに見えた。


服を詰め込んだキャリーを持ち上げ、信浩がいるリビングへと姿を見せると、タオルで押さえて水気を切っただけの濡れた髪を見て。


「あー、まだドライヤー買ってないんだよな」

そう言ってソファーから立ちあがると、冷蔵庫から冷え切ったグラスを一つ取り出した。

氷を数個と真っ赤な色をした液体を注ぎ、オレンジジュースをそれに加える。


「ほい」

ソファーの端っこに腰を下ろし、テーブルの上に置いた。テーブルには待っていた間に空けたのかビールの缶が2本に、赤味がかった濃いオレンジ色に染まるグラスが乗っている。


それは、紛れもなくほぼ毎日と言っていいほど作ってくれた、ノンアルコールのカシスオレンジだった。

座れ。そう言わんばかりに信浩は、自分の隣をトントンと叩く。
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