切なさに似て…
そう言われて、ほんの数十秒前の記憶と辿る。

辿って、呼び戻した記憶には間違いなく私は信浩が好きだと。なかったことなんかできないって。

はっきり言っていたし、いちいち辿らなくたって言った言葉くらい、きちんと覚えてる。


「…好き。って言った」

顔を上げ、じっと信浩の顔を見入るようにしてそう言った。


「…柚果が、俺を好きって、こと?」

一言、一言言葉を紡んだ信浩に、コクンと首を縦に振り頷くだけで精いっぱい。


これ以上は無理だと思った。

また、目頭が熱くなる。自然に顔が下を向いてしまう。


「嘘じゃ、なくて?」

低い声が耳に届き、私はまた下を向いている首を振る。


「本気で…?」

またひとつコクンと頷く。


「からかってるとか…、はめようとしてるんじゃなくて?」


「違う…」

好き。そう付け加えて発した台詞は声にはならなかった。

「はぁー…」

重苦しく溜め息を吐いた後、立てた膝に顔を埋めた信浩は、もう一度確認するかのように低い声をあげた。


「俺はバカだから、それ、本気にするぞ?」

「いいよ」

そう答えると、顔を両手に包み何度か擦りあげる。


顔面から離れた両手は、すーっと私の目の前まで伸びてきて背中に回された。

引き寄せられ強く締め付けられた身体は、一気に熱が伝わり全身に火が駆け回るみたいに熱くなる。
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