切なさに似て…
すぐ近くで聞こえる吐息が、耳にまで届きそうな心音だとか入り混じり、息をするのも忘れてしまいそうになる。


「柚果…。ごめん、やっぱ好きだわ、お前のこと」

「どっちなのよ…」

「…好きに決まってんだろ」

少しだけ掠れた低い声。

その私の好きな声で、そして、痛いくらいに抱き締められた熱を発する身体に。

また、私は涙が出てしまう。もう止められなくて、自分でもコントロール不能。


一体、私の涙腺はどうしてしまったのだろうか?

こんなんじゃなかったのに。


「ずっと、好きだった。忘れることも、諦めることも、もがくこともできなかった」

そう耳の奥に届けば届くほど、私の目からは熱いものが溢れ出して、広い胸の中で首を何度も振り、泣きじゃくるしかできなかった。


大きな背中に手を回し、腕に包まれどのくらいの時間そうしていたか、長いようで短く。物足りなさを残しつつ離れた身体はまだ熱が籠る。

重なった目線はどこかぎこちなく、ちょっぴり恥ずかしくてそこに、いつもの私たちはいなかった。


「…だけど、お前そんな素振り見せなかったじゃねーかよ?」

「そんなこと言ったら、信浩だってそうじゃん」

「俺の気持ちは分かりやすかっただろ」

「ちっともわからなかったよ」

「鈍すぎねーか?」

少し唇を尖らせた私に信浩は眉を顰めて返事を返す。
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