切なさに似て…
未だに信浩の手の平は、自分の横でポンポンとせわしなく動いている。

そこに身体を預けるのには抵抗がある。


信浩は見兼ねたのか、そんな躊躇する私の腕を引っ張り、強引にマットへと引き寄せる。

天井の模様がはっきりと映る。ギシッと軋むスプリング、僅かにバウンドした身体。掴まれたままの腕。すぐ隣には信浩が寝そべっている。


「…他の男とは寝れて、俺とは寝れないのかよ?」

ボソッと呟くような口調は、決して穏やかではなかった。


先程の口論の続きでもしたいのだろうか。

耳に届いたその声色は、これでもかと低く怒っているように聞こえた。


「そ、そういうことじゃなくて…」

咄嗟にそう返すも、後に続く言葉が見つからない。


そんなに言うなら一緒に寝る。とでも言えばいいのだろうか。


いや、違う。

そんなことが言いたいわけでもなければ、言われたいわけでもないはずだ。


喉まで出かかっているのに口に出せずにいるのは、やっぱり不安が大きいから。

でもきっと、ここは私が言わなければ私たちは前にも後ろにも引けない。


ベッド脇に置かれた目覚まし時計の、チクチクと一定のリズムを刻む針の音が、そんな私の心を逸らせる。


「ね、信浩…?」 

「…ん?」

返事すらしてくれなかったらどうしよう。そう思っていたけれど、引く掠れた声がして安心する。


「電気、消さない?」

私がそう言うと、ピッと小さな音と共に部屋を照らしていた明かりが消える。
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