切なさに似て…
『…なぁ、柚果。あれ覚えてっか?高校1年の時のあれ…』

『うん。あれでしょ?』

『そう、あれ…』

『あれが、…どうしたの?』

『いや…、覚えてんのかなと思ってさ』

『覚えてるよ…』

『あの頃は早く大人になりたくてしょうがなかったのに。いざ大人になってみると、あの頃に戻りたいとか思わねーか?』

『思うっ!』

『一番楽しかったかもなー。よくみんなここをたまり場に使ってたよな。あーあ…、戻りてーな』

『戻れたら何するの?』

『そーだな…、やり残したこと全部やりたいな。青春ってヤツ?…柚果は?』

『私は…。信浩と同じかなぁ』


ねぇ?

言い出しっぺは信浩なんだから。、絶対忘れないでよ、ね?


あの時は、昔に戻りたいって。

心底思ったけど。


戻って…、素直になって信浩に好きだって言いたかったけど。


今なら、このままでもいいなって思えるよ。

このまま…。


こうして、二人で。

こうして、一緒にゆっくりでもいいから、前を向いて歩いていくの。悪くないじゃん?

永遠があるかないか、幸せなのかはわからないけど、きっと…。

ううん、絶対。


信浩と一緒なら、私は幸せなんだろうなあ。


大好きなカシスオレンジと。

大好きな信浩がいなかったら、やっぱり切ないから…。



夢の中で握られた拳。信浩の手の平をギュッと握り返した。




[第二部 2010.01.05 End.]
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