切なさに似て…
番外編

不透明

騒がしい構内に、ガイダンスが響き渡る。

『16時5分発、新千歳空港行き…』


「お盆までは帰れそうもないな」

「そっか…」

俺が言った台詞にさっきまでの笑顔が隠れ、いつもより低い声を出した柚果。


「そんな顔すんなって」

グリグリと、柚果の眉間に人差し指を押し込む。

うん。とポツリと蚊の鳴くような声で頷き、残念というか淋しそうに長い睫毛を伏せるから。


「ほーらっ、飛行機出ちまうぞ」

宥めるようにして、ポンポンと頭を撫でるも逆効果で。


「ごめん…。笑って帰るつもりだったのにっ。泣きそうっ…」

なんて言って、俺の胸に飛び込んできた。


そんな柚果が、いつになくかわいく見える。

お前ね…、俺の気持ち、考えたことあるのか?


柚果の背中に回した腕に力が自然に入る。


ほらな、帰したくなくなっちゃたじゃんかよ。


「大丈夫だって、すぐ会えるから」

「4ヶ月なんてすぐじゃないじゃん」

自分の顎のしたから聞こえる啜り泣く声に、そりゃそうだ。と納得してる場合ではない。


「すぐだよ。毎日電話するから」

「すぐじゃないよ!それに、声聞いたら会いたくなるじゃん」

「だぁーっ!ったくもう!」


んなこと言うなよ。

それは俺も同じだから。
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