切なさに似て…
バイトを始めて、なるべく家には遅く帰るように努めていた。早く帰れば否が応にも会いたくない“オバサン”と、顔を付き合わせてしまう。

始めたバイトは順調で、シフトが休みの日。学校の図書館に居座るのも飽きて来た頃。私に声を掛けたのは信浩だった。入学から1ヶ月が経っていた。


『立花?帰らんの?』

『んー、帰りたくないの』

『んじゃ、家来る?』

さらっとそんなことを言われて、驚いた。

『へ?』

『心配しなくても、襲わねーよ』

尚のこと驚き、目を見開く私を無視し『早く来ねーと、置いてくぞ』って、教室から出て行った。


『ちょ、私…。親がいるとかちょっと面倒なんだけど…!』

『は?独りだし』

『…え?』

共働きか何かで、親が留守なんだと思っていたが、独り暮らしだから。と言われ、益々意味がわからなかった。
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