僕は彼女の事を二度愛していた
やっぱり、電話だった。メールより電話がいい。彼女の透明感のある声が、やさしく耳元から聞こえてくる。快感だった。
「・・・でね、・・・なんだよ。」
彼女は一方的に話し続ける。でも、それで良かった。声がたくさん聞けるから。
「そうなんだ。僕も見たかったな。」
「ホント、見てほしかったな。あ、そうだ。約束していたデート、そこに行かない?」
「いいね。行こう。」
僕達は、それからああでもない、こうでもないと細かく何をするか決めていった。中には、高校生の僕には、絶対に無理なものがあった。
「私、フランス料理が食べたいな。」
「えっ・・・?」
固まった。
「冗談だよ。高校生が、そんなお金持ってないの、わかっているよ。でも、でもね・・・。」
彼女は言葉を溜めた。そして、恥ずかしい事をしれっと言ってのけた。
「わ、私達が結婚する前には、一度くらい行きたいなぁ。」
電話だから、顔が見える事はない。でも、思わず手で顔を覆った。耳が痛くなるくらいに、真っ赤に染まった。
「えっ、あっ、うぅ・・・。」
「照れちゃって、大河内君かわいいね。でも、そうなるように、ずっと、ずっと一緒にいてね。」
「う、うん・・・。」
小さな声で、返事した。
「えっ、何?」
「うん、ずっと一緒だよ。」
さっきよりも、大きな声で言った。
「へへ・・・。」
かわいい声で、今度は彼女が照れている。そして、電話の切り際に言った。
「早く、日曜日になるといいね。」
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