僕は彼女の事を二度愛していた
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「ねんねこ、ねんねこ、ねんねこなぁ・・・。」
突然、彼女は歌い出した。
「思い出した?」
どこかで聴いた気がする。でも、どこで聴いたか、思い出せない。
「どこかで聴いた事あるけど・・・ごめん・・・思い出せないや。」
「あんなに、たくさん歌ってあげたのに?」
「たくさん?歌ってあげた?どこで?」
「覚えてないの?」
刺すような視線だ。気持ちが凍る。
(なんて目で、見ているんだ・・・。)
僕は彼女の事を愛している。それは間違いない。けれど、その視線は、彼女を愛している事を後悔させるくらいに、強く、僕の事を攻め続けている。
(どうして・・・、どうして、そんな目で僕の事を見るんだ。)
「本当に覚えていないみたいだね。」
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