僕は彼女の事を二度愛していた
「あ、そうだな。女子達が言うには・・・。」
「言うには?」
「独り言が多いらしいんだ。」
「独り言?そんなの誰にでもあるじゃないですか。」
「それがどうも・・・普通の独り言じゃないらしいんだよな。実際に見てないから、ハッキリした事は言えないが、一人で照れたり、大喜びしたりしてるらしい。中には電話もかかってきていないのに、電話をとって独り言を言っているのを見た、そんな事を言う者も出る有様だ。ただ事じゃないだろ?」
「独り言で電話を使う?もし、それが本当なら確かに、キモチ悪いと言われても仕方ないですね。でも、そんなの聞いた事がない。」
「確かにな。そこでお願いなんだが、大河内、それとなく加藤の様子を伺って報告してくれないか?」
なぜ僕が?頭の中はそれでいっぱいになった。
「えぇ、僕がですか?」
「あぁ、頼まれてくれるよな?」
部長は肩書きこそ部長となっているが、実権はこの部長が握っていると言ってもおかしくないのが、僕の会社の実状だった。
部長もそれをよくわかっている。僕が断るなどとは思ってもいないのだろう。キラキラ、目を輝かせながら答えを待っている。
「わかりました。でも、期待はしないで下さいよ。」
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