平安物語=短編集=【完】
「……どうして泣くのです。
私より彼奴が良いのですか?」
私の手首を握る手に、一層力が入りました。
「こ…わい……怖いです……」
ぼろぼろと涙を流しながら呟くように伝えると、中将様は夢から醒めたようにハッとなさいました。
そして強く抱き締められます。
「すみません…怖がらせるつもりは……」
なおも私が泣くので、中将様は「すみません…すみません……」と仰いながら背中を撫でてくださっていました。