平安物語=短編集=【完】
夜が明けきる前にとお支度なさって、出て行こうとする時、つい義道様の袖を掴んでしまいました。
「何て可愛い事をなさるのか…」
と仰りますが、私の気持ちは晴れません。
――今夜は、いらっしゃらないのね…
でも昨夜だって無理に来てくださったのだから、今夜も来てだなんて言えません。
ぐずぐずしていると、ふわっと抱き締められて
「今夜も、また来ます。」
と言われました。
ぱあっと顔を上げると、にっこりとした義道様が
「そんな顔をされたら、来ないでいられる男なんていませんよ。」
と仰って、頬に唇を落として帰って行かれました。