平安物語=短編集=【完】



「良い月ですね?」

にこにこしながら、御簾を挟んで座られました。


容姿は悪くないし、御身分なんてもったいないくらいなんですが…何となく頼りなくて…

ただただお優しくて、好みではないのです。


求婚を受けるつもりは無いので、どう上手くはぐらかすか、頭をフル回転させていました。


ああもう、あっちから声をかけてきたのなら、気分が悪いとか何とか言って逃げられたのに…


こんな時、身分の高い姫様が羨ましくなります。

想いを寄せる男性が来ても、女房伝で済みますから…



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