平安物語=短編集=【完】
あまりのことに、涙が溢れてきます。
「泣かないで…」と私の涙をすくってくるのも疎ましくて離れようとするのですが、きつく抱き締められていて逃げられません。
細々と愛を囁くのも、今の私には馬耳東風、何の反応も示さず涙に暮れる私なのに、中納言様は感極まって泣き出してしまいました。
男のくせにと更に疎ましく、冷めた態度を取り続けているうちに夜が明けて、後ろ髪引かれるように帰って行きました。