平安物語=短編集=【完】
早く早くと仰るので申し訳ない気持ちで近寄ると、私の顔をご覧になって
「まあ、泣いていたのね?
着の身着のままやって来るなんて、怖い夢でも見たの?」
と仰います。
どう言おうかと黙り込んでいると、姫様はそれ以上問うことはなさらず、そう言えばと他の話を始めました。
昔から、姫様はお優しくて、人の痛みがよく分かるお人柄で…
姫様の優しさに再び目頭が熱くなりながら、姫様との雑談に花を咲かせました。