平安物語=短編集=【完】



それでも朝はやって来て、私は勉学に励む。

抜け殻になったような私でも、淡々と学問をこなす事はできた。


ただ、女御達に逢うことは出来なかった。

更衣を、忘れたくなかった。

更衣の笑顔、髪質、肌のきめ細やかさ、柔らかい声、細い指の感触を、薄めてしまうのが怖かった。



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