平安物語=短編集=【完】



和仁の袴着が済んだ年に、政治の実権を握っている太政大臣の一人娘が、女御として華々しく入内した。

後に中宮となった、藤壺の女御である。


妃の身分、ひいては寵愛の程度も父親の身分に比例すべきという常識に従って、私は藤壺を“寵愛”した。

身分が高いからと言って、愛情が芽生える訳でもないのに…

誰より頻繁に召して、優しく接した。


しかし藤壺は、他の妃達とは違ってとことん無愛想だった。

太政大臣の姫ほどの身分だから、気位が山より高いのだろうと呆れた。

しかし、自分を売り込もうと媚びを売ってくる女御達よりはかえって一緒にいやすく、特に……とても美しく教養も豊かであったため、“寵愛”するのも苦ではなかった。



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