平安物語=短編集=【完】



そのうち、なんと、女御の一人が皇子を出産した。

その女御は、皇族の出身であった。


…皇女であれば、和仁を東宮にできたのに…

身分の確かな女御が皇子を産んだとなれば、更衣腹で母の亡い和仁の皇位継承は絶望的である。


複雑な思いで若宮を抱くと…それでもやはり、我が子は愛しかった。


私が皇位につき、混乱を招く前に二の宮を東宮につけた。


一の宮には、何度も何度も、

「私は一の宮と二の宮を等しく愛している。

どうしようもないことなので弟宮を東宮にするけれど、あなた方はこれまで通り仲良くやっていくのですよ。」

と繰り返した。

一の宮は幼いながらに一生懸命理解しようとしてくれて、不覚にも目頭が熱くなった。



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