平安物語=短編集=【完】



控え目だと思っていた二の宮の母の女御は、皇子の母となるやいなや自信がついたのか、若宮の東宮就任や自分の立后などに進言してくるようになった。


その人を、御息所と敬称した。


御息所は、中宮の最有力候補である藤壺を敵視していて、聞き苦しい事も私に言ってきた。


「そもそも昔は、中宮及び皇后となるのは皇族出身者と決まっていましたし、天皇家の尊さを思えばそれこそ正当な事と思われます。

それを、かの藤壺様の御先祖にあたる藤原四子が、藤原の姫君を無理矢理に皇族におつけしたのでした。

これからこの二の宮が生きてゆく世の中は、どうかより良いものにしたいと思し召しくださいませ。

それに、東宮の母が中宮でなくては、東宮がどんなに心細く情けなくお思いになるか…

何も、私の私欲で申し上げるのではございませんわ。」

というのが、自薦する主な理由であった。



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