平安物語=短編集=【完】
翌年には、二の宮――尚仁の袴着。
これに際して、御息所が動いた。
ある夜、御息所を召すと、ちょうど参内していた尚仁を寝所に連れてきた。
珍しいことだと思っていると、御息所が
「若宮、お父様に申し上げたいことがあるのでしょう。」
と言うので、
「おや、どうした?」
と尚仁を促すと、尚仁は私に向かってちょこんと正座して
「はい、ちちうえ、おねがいがございます。
ぼくの袴着の儀式では、とっても不安なので、ぼくのそばにずっとははうえにいていただきたいのです。」
と、朗々とセリフの棒読みをした。