平安物語=短編集=【完】
呆れて御息所を見るが、御息所はけろっとした顔で目をそらす。
仕方なく尚仁に向き直り、
「三歳にもなってそのような情けない事を言っていては、皆に笑われてしまうぞ。
男の子なんだから。」
と言うと、尚仁は困った顔をして母を見た。
御息所は尚仁の両肩に手を置いて私を見、
「そんな、まだたったの三歳でございますよ。
大勢の人が集まる場で失敗をおかせば、どんなに恥ずかしいだろうかと心配ではいらっしゃらないのですか?」
と責め立てた。
「しかし、一の宮とて母亡くして儀式を終えた。」
と反論すると、
「まあ、生まれながらに母君のいらっしゃらない一の宮は、当然たくましくもなられるでしょう。
しかし二の宮は、世間並みの母の愛を受け子供らしく甘えのある子です。
一の宮とお比べなさるのは、筋違いですわ。」
とまくし立てた。